テーマがないというヘボさ

この記事はヘボコンAdvent Calendar 2017の5日目の記事です。

ヘボコンとは、知人である石川大樹さんが2014年に始めた「技術力の低い人限定ロボコン」のこと。いまでは世界的な広がりを見せ、25カ国以上の国々で開催されている。

ヘボコンでは毎回、優勝トロフィーを小さな子どもが作る。そして第二回ヘボコンのトロフィーを、うちの息子(当時6歳)が作ったのだった。

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そんな縁もあり、いつかはヘボコンに参加しようと思っていた。機会がめぐってきたのは、2016年10月に東京デザインウィークで開かれたヘボコン大会だった。

大会の副題は「ペイント・エディション」。ロボットが相撲をしながらなんらかのペイントをする、というものだった。どんなロボットにどんなペイントをさせるか、それが参加者の創意工夫のしどころだ。

ところがぼくは、「ロボットのアイデアはあとで考える」という選択肢をとった。自分の技術ではどうせロクに動くロボットは作れないだろう。だったらまず何とかして動く車体のようなものを先につくり、テーマはそれから考えればいいと思ったのだ。しかしそれが失敗だった。

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ヘボコンのロボットを作るには、とりあえずタミヤに行くのがセオリーのようだった。ぼくはとりあえずタミヤに行き、2時間くらい悩んで有線のコントローラーとギアボックスを買ってきた。

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それで組み立てたのだが、「どう考えても無理!説明書が間違ってる!!」と投げたくなるのを5回は繰り返した。

SAMSUNG CSC

それでもなんとかそれらしい形になった。最初は4輪車にしていたのだけど、それだと左右に方向転換できない、ということを試して初めて知り、急遽3輪車にした。そのためにもう一度新橋のタミヤに行ったのだ。ここまで都合2週間くらいかかっている。

そしてなんとか3輪車が動くようになった。そしてはたと困った。実を言うと、動くものが作れないと思っていたのだ。「ヘボくて動きませんでしたー」と言おうと思っていた。

しかし動いてしまった。となると、なにかいいアイデアを考えないといけない。

歴代のヘボコンを見ていると、ヘボとは名ばかり、じつはみんな素敵なテーマを持っていて、ただ技術がそれに伴わずロボットがうまく動かないようなのが多かった。

いまのぼくは逆だ。テーマは何もない。ただ、動く。こんなヘボい状況があるだろうか。

結局、「ペイント」というお題をそのまま体現することにした。パレットを車体にしたのだ。

DSC02829(写真はデイリーポータルZより)

パレットに、絵の具や筆を置いた。タイヤも紙テープに変えた。走れば走るほど紙テープがほどけるようにしたのだ。

kami(同じくデイリーポータルZより)

動けば動くほど紙テープはほどけ、最終的にはまったく動かなくなる。その点がヘボくてよかった、という感想をもらったりもした。

しかし、告白しなければならない。この紙テープは、「テーマがない」というヘボさを隠すために、後から追加したヘボさであることを。

見た目はパレットにした。ああ、「ペイント」を体現したんだな、と分かってもらえるだろう。しかし、足がタイヤのままだと、そつなく動いてしまう。なんの面白みもないのだ。だから、打算的に足を紙テープにした。

そんなヘボの作り方があっていいだろうか。いや、よくない。よくないのだが、ほかにアイデアがなかったのだ。

世の中にはいろいろなヘボさがある。作りたいものがあるのにうまくいかない。間に合わない。作ったのに電車に置き忘れる。どれもいい。

ぼくの場合は、テーマが思いつかない、なのであった。これもまたなかなかのヘボさだったと思う。

団地図解イベントに行った

「団地図解」という本の出版記念イベントに参加した。

ゲスト話者の一人の大山顕さんが「イベントの感想って最近だれも書かないねー」と言っていてはっとしたので、感想を書こうと思った。イベントを開催する側からしたら、やっぱりリアクションがあったほうが嬉しいにきまってる。

イベントは10月26日の19時から、三田の建築会館にある建築書店という本屋さんで開かれた。話者は、著者の篠沢健太さん、吉永健一さん。ゲストは石川初さんと大山顕さん。

大山さんの話

最初はゲストの大山さんの話から。自己紹介プレゼンということで、工場、ジャンクション、団地など撮ってきましたという話。それからマンションポエム。だいたい聞いたことあるなと思いつつ、知らない話もいっぱいあった。

・団地は当時、だめな景観の代表だった。
・団地の写真はシノゴで撮ってた。
・どこに住むかを自由に選択できるようになったのは最近の話。
・マンションにおいては、街は利用する資源であって、コミットするものじゃない。
・団地は街にコミットしていた。

こどもの頃からずっと筑波の団地に住んでいて、その景色がふつうだと思っていたので、景観論的にはありゃだめだったのかということを初めて知った。団地の景観はだめともいいとも思わない。ふつうだと思う。

マンションポエムにおいては、街は一方的に利用する資源だ。大山さんの話は毎回目から鱗が落ちる。読んでる本の量とか考えてる量がちがうんだろうな。

石川さんの話

石川さんは当初かんたんな自己紹介スライドを用意してきたものの、大山さんのスライドを見て考えを変えたとのこと。

・物をちゃんと見るためには物語が邪魔。
・たとえば団地には物語、ノスタルジーがまとわりついてる。
・大山さんはそれをはがすために、曇り空で正面から撮るみたいな作法を徹底した。

機能美すら物語だ、っていうのはショックだった。工場は装飾を排除した機能美だから萌えるんだっていう説明で満足してた。まずはちゃんと形とか色みたいな本当の表層を見よう。それより奥には物語がついてしまう。というようなことを「ドボク・サミット」の時点で大山さんは言っていたらしい。そうだったのか。読み直そう。

・日常に近いものほど物語が目くらましになる

団地は日常に近いのでノスタルジーがじゃまになる。いっぽうでダムはダムカードとかダムカレーみたいな物語がついてもたいしてじゃまにならない。

あとは「本物の正義問題」ということを言っていて、意味と表現が一致していることがえらい、という価値観が問題になることがあるそうだ。あまりピンと来なかったのでまた機会があれば教えてもらおうと思う。あるいはどっかに文章があればいいんだけど。

吉永さんと篠沢さんの話

特定の団地をとりあげて図で解説する、という内容。本でやってることをライブでやる。もちろん本も読んだんだけど、ライブだと分かりやすさが全然ちがう。ライブ感がある。あたりまえ。

著者の吉永さんは、自分たちが読みたい団地の本がないから、自分たちで作ったと言っていた。自分たちがまだやる余地があると。その気持ちちょっとわかる。比べるのはおこがましいけど、「街角図鑑」を作る動機はそうだった。読みたいのになかったら自分たちで作るしかない。

千里ニュータウン
・初期の団地
・地形を完全にならすだけの技術がなかったので、地形に負けつつ、生かす感じ。
・風景としては山岳集落みたいな団地。端的にいうと素敵。
・制約のなかで合理的な選択をすると集落みたいになっちゃう。
・規模がでかくなると無視できないものが増える。たとえば地形。
・団地はでかい。でかさが土木性につながる。
・間取りから住棟のレイアウトが導かれる。

金沢シーサイドタウン
・1978年ごろの団地
・不自然な微地形がある。海沿いの埋立地で、塩っぽい水の地下水位が高いので、植栽のためにわざと盛ってる。
・槇文彦さんと若手の設計。
・槇さんのほうは、グリッド型。
・広い道と小さな裏路地みたいなのがいちいち設えてある。設計者の意図を感じてちょっと息苦しい。
・住民も槇さんに遠慮してあんまりカスタマイズしてないのでは。
・若手のほうの土地は、横浜市が歩行者専用道を45度に曲げてつくってある。
・部外者はぜったい迷う道。
・その道にどうアプローチするかが設計者ごとに違って面白い。

45度に曲げた道はつくばにもある。住民にとってはなんでもないふつうの道なんだけど、初見の人にとっては迷いやすいと評判が悪い。直接関わったのは土肥博至さんと土田旭さん。後になって、同じく筑波に関わった大高正人さんと土肥さんが対談して、今でも文句を言われて耳にタコができるほど、と言っている。

「不自然な微地形」みたいなものに気づく人と一緒に歩いたら楽しいだろうなと思う。建築の人は街を歩いていてもいろんなものが見えてるんだろう。いいなあ。

俺が設計したぞ感が息苦しいという気持ちは分かる。ただ、子どもの頃に団地に住んでた感想からすると、どんなに設計されててもそれが当たり前の風景なので何も感じない。

大人になってから、クルドサックというものを知った。世の中にはそんなにも設計者が出しゃばったような不自然な道があるのかと感心した。ところがなんと、自分が住んでた団地の前の道がまさにクルドサックだったのに後から気づいた。がびーん! ぜんぜん不自然じゃなかったです。

ごはん食べた

21時には終わった。お腹すいたのでごはん食べにいかないかなーと粘ってたら運良く誘ってもらって、近所でごはんを食べた。登壇者たちと、それを囲むファンの集いのようになっていた。こういうのが楽しい。大山さんがテロで死ななくてよかった、みたいな話をした。

編集者の方はまだ若い方だそうだ。ベテランの建築家や大学教授を巻き込んで3年かけて本を作った。たいしたもんだ。

23時すぎに解散。

連続駅五七五を調べた

「信濃町 – 四ツ谷 – 市ヶ谷 – 飯田橋」で五七五になるんだそうです。これ、総武線の連続する駅なんですね。よく見つけたものだと感動しました。

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調べてみると「#連続駅五七五七七」という、短歌になってるやつについてのまとめがありました。でも単なる五七五については特にまとまってないようでした。

そこで、五七五について他にどんなのがあるか、プログラムを書いて調べてみました。

結果

全国で59件見つかりました。
たとえば、東京は以下の8つが見つかりました。

JR中央線(快速)
飯田橋 – 市ヶ谷 – 四ツ谷 – 信濃町

JR中央・総武線
錦糸町 – 亀戸 – 平井 – 新小岩
新小岩 – 小岩 – 市川 – 本八幡

東武伊勢崎線
鐘ヶ淵 – 堀切 – 牛田 – 北千住

東京メトロ千代田線
根津 – 湯島 – 新御茶ノ水 – 大手町

東京メトロ南北線
飯田橋 – 市ヶ谷 – 四ツ谷 – 永田町

都電荒川線
栄町 – 王子駅前 – 飛鳥山

総武線だけで2つもあるのはすごいですね。

他に気になったもの

奈良の大和路線というのがいいです。

大和路線
郡山 – 大和小泉 – 法隆寺

法隆寺、で終わられたらもう俳句そのものです。鐘が聞こえてきそうです。
富山もいいですね。

富山地鉄本線
西魚津 – 電鉄魚津 – 新魚津

どんだけ魚津なのかと。

使用したデータ

駅と路線データについては「駅データ.jp」のデータを利用しました。ただし無料で利用できるデータには駅名の読みが入っていないので、その点については「日本全国駅名一覧」のデータを利用しました。

探索のプログラムは Ruby で作りました。大雑把にいうと、路線図の最初の駅から順に575の最初の5を探し、見つかれば次の7を、失敗すれば次の駅に進んで最初の5から、みたいに探しました。

すべての結果

最後に、すべての結果の一覧です。

JR函館本線(函館~長万部)
尾白内 – 東森 – 森 – 桂川

JR函館本線(小樽~旭川)
納内 – 伊納 – 近文 – 旭川

JR富良野線
北美瑛 – 美瑛 – 美馬牛 – 上富良野

JR東北本線(黒磯~利府・盛岡)
五百川 – 本宮 – 杉田 – 二本松
二本松 – 安達 – 松川 – 金谷川

ドラゴンレール大船渡線
脇ノ沢 – 小友 – 細浦 – 下船渡

JR北上線
柳原 – 江釣子 – 藤根 – 立川目

JR田沢湖線
鑓見内 – 羽後四ツ屋 – 北大曲 – 大曲

JR常磐線(いわき~仙台)
久ノ浜 – 末続 – 広野 – 木戸 – 竜田

JR中央線(快速)
飯田橋 – 市ヶ谷 – 四ツ谷 – 信濃町

JR中央・総武線
錦糸町 – 亀戸 – 平井 – 新小岩
新小岩 – 小岩 – 市川 – 本八幡

宇都宮線
野木 – 間々田 – 小山 – 小金井 – 自治医大

JR内房線
蘇我 – 浜野 – 八幡宿 – 五井 – 姉ヶ崎

JR身延線
波高島 – 下部温泉 – 甲斐常葉
甲斐常葉 – 市ノ瀬 – 久那土 – 甲斐岩間

JR飯山線
上境 – 上桑名川 – 桑名川

JR飯田線(豊橋~天竜峡)
上市場 – 浦川 – 早瀬 – 下川合

JR高山本線
美濃太田 – 古井 – 中川辺 – 下麻生

JR東海道本線(浜松~岐阜)
愛知御津 – 三河大塚 – 三河三谷

JR紀勢本線
大泊 – 熊野市 – 有井 – 神志山

大和路線
郡山 – 大和小泉 – 法隆寺

JR山陰本線(園部~豊岡)
上夜久野 – 梁瀬 – 和田山 – 養父 – 八鹿

奈良線
東福寺 – 稲荷 – JR藤森 – 桃山 – 六地蔵

きのくに線
冷水浦 – 海南 – 黒江 – 紀三井寺

JR山陰本線(米子~益田)
波子 – 久代 – 下府 – 浜田 – 西浜田

JR福塩線
道上 – 万能倉 – 駅家 – 近田 – 戸手

よしの川ブルーライン
鮎喰 – 府中 – 石井 – 下浦 – 牛島

JR予讃・内子線
伊予横田 – 鳥ノ木 – 伊予市 – 向井原

JR鹿児島本線(下関・門司港~博多)
陣原 – 折尾 – 水巻 – 遠賀川

東武東上線
朝霞台 – 志木 – 柳瀬川 – みずほ台

東武伊勢崎線
鐘ヶ淵 – 堀切 – 牛田 – 北千住

東武野田線
新柏 – 増尾 – 逆井 – 高柳

京急久里浜線
津久井浜 – 三浦海岸 – 三崎口

東京メトロ千代田線
根津 – 湯島 – 新御茶ノ水 – 大手町

東京メトロ南北線
飯田橋 – 市ヶ谷 – 四ツ谷 – 永田町

名鉄名古屋本線
新清洲 – 大里 – 奥田 – 国府宮

名鉄犬山線
石仏 – 布袋 – 江南 – 柏森

南海高野線
帝塚山 – 住吉東 – 沢ノ町
紀伊清水 – 学文路 – 九度山 – 高野下

京阪本線
丹波橋 – 伏見桃山 – 中書島

京阪石山坂本線
浜大津 – 三井寺 – 別所 – 皇子山

阪急宝塚本線
売布神社 – 清荒神 – 宝塚

阪急京都本線
高槻市 – 富田 – 総持寺 – 茨木市

阪神本線
甲子園 – 久寿川 – 今津 – 西宮

フラワー長井線
白兎 – 蚕桑 – 鮎貝 – 四季の郷

都電荒川線
栄町 – 王子駅前 – 飛鳥山

新京成線
高根木戸 – 高根公団 – 滝不動

千葉都市モノレール2号線
小倉台 – 千城台北 – 千城台

北しなの線
北長野 – 三才 – 豊野 – 牟礼 – 古間

富山地鉄本線
西魚津 – 電鉄魚津 – 新魚津

豊橋鉄道渥美線
大清水 – 老津 – 杉山 – やぐま台

三岐鉄道三岐線
伊勢治田 – 東藤原 – 西野尻

叡山電鉄鞍馬線
二軒茶屋 – 市原 – 二ノ瀬 – 貴船口

水間鉄道水間線
近義の里 – 石才 – 清児 – 名越 – 森

西九州線(有田~伊万里)
西有田 – 大木 – 山谷 – 夫婦石

西九州線(伊万里~佐世保)
佐々 – 小浦 – 真申 – 棚方 – 相浦

肥薩おれんじ鉄道線
肥後高田 – 日奈久温泉 – 肥後二見

知ってる路線だと、おおっと思いますね。

訂正

当初書いていた以下のものは誤りでしたので削除しました。

JR成田エクスプレス
池袋 – 新宿 – 高尾 – 八王子

JR中央線(快速)
飯田橋 – 市ヶ谷 – 四ツ谷 – 信濃町

福北ゆたか線
桂川 – 筑前大分 – 九郎原(けいせん を かつらがわ と認識しちゃってました)

単純な一直線じゃない路線の場合がおかしかったみたいです。

街角の鑑賞ガイド「街角図鑑」

「街角図鑑」という本を書きました。

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街を歩いているとよく見かける、なんでもないものを集めた本です。

パイロンとか、車止めとか、マンホールとか、そういうもの。ありふれているからこそ、かえってちゃんと見たことがない。でも集めてみると、じつはいろんな種類があって、それぞれ全部違うんだという驚きがあります。

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たとえばこれ、パイロンです。三角コーンとか、カラーコーンとか呼ばれています。カラーコーンというのはパイロンの商品名の1つで、それ以外に「HKスコッチコーン」とか「サワーコーン」みたいな少しづつ違うパイロンがいっぱいあるんです。すごいですよね。

これからは、街でこういうのを見かけても「あ、パイロンだ」じゃなくて、「レボリューションコーン700だ」と思うことができるんです。便利!

著者がまた豪華なのです。

・石川初さん:「仮設と常設」「重力が支配する」「指標としての路上園芸」「舗装のなかま」「縁石・排水溝のなかま」
・磯部祥行さん:「勝手ミラー」
・伊藤健史さん:「のぼりベース入門」、「擬木のなかま」
・内海慶一さん:「装飾テント」
・大山顕さん:「雰囲気五線譜」
・柏崎哲生さん:「井戸ポンプのなかま」
・木村絵里子さん:「送水口鑑賞ノート」
・小金井美和子さん:「マンホール蓋のなかま」「境界標のなかま」
・佐々木あやこさん:「送水口のなかま」
・八馬智さん:『街角にあふれる「お店では買えないモノ」のデザイン』
・村田彩子さん:「路上園芸」

タイトルだけでも楽しそうでしょう。読むとじっさい楽しいですよ!

この本の「はじめに」の章は、著者の一人でもある石川初さんに捧げられています。まさに「はじめに」です。この本を作るきっかけの1つが、石川さんの早稲田大学の授業での課題「新しい鑑賞ガイド」だからです。

街にありふれているけれども、ふだん目を向けられることがないものを鑑賞するためのガイドを作りなさい、という課題。

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たとえばこれは、学生の方が提出した「ガイドポストさん」です。素敵ですよね。こんな本が作りたいなと思ったのです。

そしてこの本の「フィールドワークにでかけよう」という章は、同じく著者の大山顕さんと内海慶一さんに捧げられています。見ていたはずなのに見えていなかったものが街にはいっぱいあるということを、お二人に教わりました。

この本は多くの方の協力によって出来ました。きっかけとなる「街角図鑑」という記事を書く場所を頂いたニフティのデイリーポータルZ、それから執筆いただいた著者の方々、編集の磯部祥行さん、原稿をレビューして頂いた方、多くの方に感謝します。写真撮影や校正などを手伝ってくれた妻にも。

今まで同じに見えていたものが違って見える。見えなかったものが見えるようになる。そういう本になるといいなあと思います。

「街角図鑑」(実業之日本社)
http://www.amazon.co.jp/dp/440811183X

 

 

 

 

オセロをひっくり返して生き物の模様をつくる

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「所さんの目がテン!」の「生き物(模様)の科学」の回で、1万枚のオセロを2つのルールでひっくり返していくと生き物の模様みたいになる、という実験をやっていたようです。

ようです、というのは後で知ったからです。すごく面白そうなのに見られなかったのが悔しいので、番組のホームページの記述をもとに、同じ手順をシミュレートしました。オセロなんですがマスは六角形に並んでいて、次のような反転のルールがあります。

反転のルール

1. 自分の周りに自分と異なる色のマスが4つ以上あるか
2. 自分の周りの2周分がすべて同じ色か

この1と2のどちらかが満たされると、自分のマスの色を反転します。

幸い、jsdo.it というサイトに六角形版のライフゲームが公開されていたので、それをちょっといじって上記のルールになるように変えてみました。

生き物の模様ゲーム
http://jsdo.it/t.mitsuchi3/YPJ9

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実際にやってみると、こんな感じです。

最初はランダムな白黒。

スクリーンショット 2015-10-05 23.31.56

ルールに従って1世代進めると、ちょっとまだらな構造が現れる。

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さらに世代を進めると、たしかに生き物の模様っぽくなります。

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小さくするとよりそれっぽいです。

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ね!こういう皮膚の魚いそう。

1つめのルール「自分の周りに自分と異なる色のマスが4つ以上あるなら反転」、これは周りと同化しようとするルールだと思います。そして2つめ「自分の周りの2周分がすべて同じ色なら反転」、これは適度にまだらにするためのルールなのかなと思います。

たとえばルール1だけを働かせると最終的にこんな風になります。

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同化の力が働いて大きな島ができるんだけど、安定してしまってこのまま模様が変化しない。ルール2があると、より撹乱されてまだらになる感じです。面白いなー。

ちなみに実験は、生き物の模様の研究で有名な阪大の近藤先生が協力されていたようです。見たかった。

ルミネのCMと地形

ルミネの新しいCMが話題になっている。

浦島さんの言う通り、奥に見える地形は確かに妙だ。真ん中の女性の顔のすぐ後ろに車があることからも分かるように、車道は急に高くなっているのに左側の歩道は同じレベルのままだ。

そして、この道には見覚えがある。印刷博物館の前の、神田川沿いの道だ。昔から大曲と呼ばれるあたり。

IMAG0997車道だけが高くなっている理由は、右から伸びてくる水色の橋にある。実は対岸のほうが2メートルほど高いので、こちら側の橋の根元の地面を盛り上げてレベルを合わせているのだ。

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橋は、上の図(東京地形地図のキャプチャー)の真ん中の白い線のようにかかっている。視線は赤い矢印の向き。色が濃いほど標高が高いので、こちら側が低いというより向こう岸が高くなっているのが分かる。

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別の場所から対岸を見たところ。ちょっと分かりにくいけど、向こう岸がずいぶん高いところに見えるのが分かる。じゃあ、ここらへんの岸はぜんぶそうかというと、そうでもない。たとえば隣の橋は両岸とも同じレベルにある。

IMAG1003ほらね。普通だ。

そうすると気になるのは、こんなふうに両岸で高さが極端に違うのはどんなときかってことだ。一つ思いつくのは、この場所が「大曲」と呼ばれていたように、神田川がぐぐっと屈曲している現場だってこと。川が曲がっている部分の内側を削り残す、みたいなことがあるんだろうか?

そう思って神田川やその支流の曲がっている部分を見てみると、確かにそう思えなくもない箇所はある。

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赤く点を打った場所は、川が大きくカーブする内側の標高がずいぶん高い(色が濃い)。ただ、これと逆に外側のほうが高いような場所もふつうにある。

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これは神田川の上流だけど、ここだと赤く点を打った外側のほうが高くなってる。だから必ず内側が高いということはないようだ。ただし、眺めてる限り、大きく曲がるようなところで両岸の標高に差があるということは割合あるように思える。因果関係としては、急に高い崖にぶつかったから大きく曲がるっていうこともあるかもしれない。

ここらへんのことは地理とか地形を勉強した人なら基本的な知識だと思うので、お前もうちょっと勉強しろってことだとは思うんだけど。

印刷博物館の前のあの道路は、以前からちょっと妙だなとは思っていた。だからこそルミネのCMを見たときにあそこかなと思えたんだけど、浦島さんに改めて「奇妙な地形」と言われるまでその理由はあまり考えたことがなかった。ルミネの新CMと浦島さんの指摘に感謝したいと思います。

Googleマイマップの埋め込みヘルパーを作った

「新しいGoogleマイマップ」で作った地図をブログとかに埋め込もうとしたとき、旧マイマップみたいに大きさや位置、縮尺を自由に決められなくて不便!と思ったことはありませんか。

実は「デフォルトビューを設定」の機能でマイマップ1つにつき1つの視点は設定できるんだけど、複数の場所に埋め込もうと思ったら依然として不便だ。

そんなときのために「Googleマイマップ埋め込みヘルパー」というのを作りました。

Googleマイマップ埋め込みヘルパー

使い方は簡単!まずは、作ったマイマップのURL、

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これをコピーして、埋め込みヘルパーのここ

スクリーンショット 2015-01-20 4.08.39

ここにペーストして、「地図を表示する」ボタンを押す。すると、下に地図が表示されるので、

スクリーンショット 2015-01-20 4.09.09

これを動かしたり縮尺変えたり、大きさを変えたりする。すると、

スクリーンショット 2015-01-20 4.09.26

その下に埋め込みURLが書かれているので、これをコピペしてブログとかに埋め込む。これだけ!

ぜひ使ってくだせー。

森ビル開発史マップを作った

「新・都市論TOKYO(集英社新書)」という本を読んでたら、森ビルの歴史が面白そうだなーと思ったので、調べてまとめてみました。

森ビルは六本木ヒルズのような大規模再開発を手がけるデベロッパーですが、その歴史は西新橋の小さな貸しビル業から始まったそうです。

時代ごとに、どんな場所で、どんな規模の開発をしてきたかを知るために、森ビルが手がけたビルやプロジェクトを年代ごとに色分けした地図を作りました。日曜日の朝からNHKの将棋中継も見ないでまとめました。

■1960年代   ■1970年代   ■1980年代   ■1990年代   ■2000年代   ■2010年代

古いほど青く、新しいほど赤くなるように色分けしています。データは森ビルのサイトからひっぱってきましたが、もう建ってないビルは載っていないので残念ながら全部ではありません。ただ傾向は分かるんじゃないかと思います。

都心についてはこれがだいたい全体図ですが、小さすぎてよく分からないので時代ごとにズームしながら見てみます。

1960〜1970年代

■1960年代   ■1970年代   ■1980年代   ■1990年代   ■2000年代   ■2010年代

右上の「西新橋」の文字の近くの青緑色の四角が、森ビルが1956年に最初に建てた「西新橋2森ビル」です。

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後から竣工した「西新橋1森ビル」もすぐ近くの外堀通り沿いにありましたが、今は取り壊されてしまいました。

その後、1960年代から1970年代にかけては虎ノ門付近に多くビルを建てたようです。青と紫の四角がよく見えます。この時代のビルには「虎ノ門35森ビル」のように名前に数字がふられていたため、ナンバービルと呼ばれたとのこと。

1978年のラフォーレ原宿は、初めての商業施設であり、初めて港区の外でおこなった開発でもあったようです。この頃からちょっと手を広げ始めた感じですね。

 1980〜1990年代

■1960年代   ■1970年代   ■1980年代   ■1990年代   ■2000年代   ■2010年代

この時代の大きな成果は、左にある紫の大きな領域、1986年のアークヒルズです。

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アークヒルズは、赤瀬川原平の「超芸術トマソン」で「ビルに沈む街」としてまさに開発中の様子が取り上げられた場所でもあります。有名な煙突写真が撮られたのとほとんど同じ場所に、アークヒルズの煙突が建っているのは偶然と思えない、ということが本にも書かれていますね。SAMSUNG CSC

このアークヒルズが、単一のビルにとどまらない面的な開発の足がかりとなりました。

次の大きな開発は1999年のお台場ヴィーナスフォートでだいぶ間が開くんですが、別にさぼってたわけじゃなくてずーっと次の準備をしていたようです。

2000年代以降

■1960年代   ■1970年代   ■1980年代   ■1990年代   ■2000年代   ■2010年代

地図左下、2003年の六本木ヒルズは、森ビルとして最大の開発になりました。計画開始は1986年だそうで、まさにアークヒルズ竣工の年なんですね。それから17年間も、ずーっと六本木ヒルズの準備をしていたと。

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何百人もいる地権者を説得してすこしづつ買い上げたりとか、森ビルのプロジェクトはこんなふうに長い時間をかけてようやく実を結ぶということがあるらしいです。

2006年には表参道ヒルズの再開発もありましたが、こういう派手な開発ばかりじゃなく、2009年には芝三田森ビルという小さなかわいいビルを建てたりもしていて、なかなか好感度アップです。

2014年の虎ノ門ヒルズは、森ビルがこれまで虎ノ門周辺で手がけた小さなビルに囲まれた、少なくとも場所的には原点回帰の開発となったんですね。地図を描いてよく分かりました。

丸の内をどかんと払い下げられた三菱と違って、森ビルは何もないところから少しづつ自力で港区を開拓していった。一案件に17年もかけたりして。なんとなく悪者のイメージありましたけど、そういうところはすごいなーと思います。

全体の地図はここから見られます:「森ビル開発史マップ
間違いなどあればご指摘ください。

参考:森ビル公式サイト「ビル一覧

追記:

フォトグラファー/ライターの大山顕さんが、森ビル開発史マップを年代ごとにアニメーション化したものを作られました。

故郷に錦を飾った森ビル | 「住宅都市整理公団」別棟

森ビルの開発の場所や規模がどう移り変わってきたかが、アニメにすることでとても分かりやすく表現されていてすごいです。ぜひ見てみてください。

ISUCON4本戦にチーム「ナイスカロリー」で参加して4位に入賞しました

ISUCON というのはITエンジニア向けのコンテストで、課題となるウェブアプリケーションをチューニングしまくって、出来る限り多くのアクセスをさばけるようにしようというものです。

第4回めとなる今回は、主催がLINE、出題はクックパッド、インフラはテコラスさんという贅沢なものでした。参加者は3人1組のチームで、今年は185組が予選に参加、そのうち上位28組がLINE本社で開かれる本戦に参加することができます。

同僚の @h_nakamura、@kawataso とともに「ナイスカロリー」とういい加減なチーム名で予選に参加したところ、主に同僚二人の活躍でなんと予選突破、11月8日(土)にLINE本社で開かれる本戦に参加できることになりました。

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LINE本社といえば渋谷ヒカリエです。こんな環境で予選突破した猛者たちと本戦を戦うことになり、当日はたいへん浮足立っておりました。

会場はこんな感じのおしゃれな場所です。

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さっそく窓際のよさそうな場所を確保しました。真ん中に写ってるのが同じチームの二人です。

11時にコンテストが開始されると、レギュレーション、つまりルールが公開されます。これをちゃんと読んでおかないと、後になって「そんなルールがあったの?」ということになって時間を大量にムダにするので、とにかく熟読しました。実装言語はいくつか選択できるのですが、慣れているPHPにしました。

課題となるウェブアプリケーションの見た目はこんなでした。

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動画広告配信のウェブアプリです。まずこれがどんなアプリなのかを把握しないといけません。おおよそ次のようでした。

  • 広告主は、広告の表示場所(スロット)と、クリックされた後のリダイレクト先URLを指定して、動画を入稿する
  • 広告を掲載するサイトは、スロットに登録された動画から1つを選んで表示する。
  • ユーザーが広告をクリックすると、リダイレクト先へジャンプする。
  • 広告主は、広告が表示された回数、クリックされた回数のレポートを閲覧できる。

動画についてはサンプルが用意されているのですが、出題チームががんばってつくったなーという感じの伝わるほのぼの映像となっていました。

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どんなアプリなのかがだいたい分かったので、つぎは計測します。チューニングの鉄則として有名な言葉が「推測するな、計測せよ」です。どこにボトルネックがあるのかコードから推測するのは効率が悪いし、はずれることも多い。とにかく計測が大事です。

ボトルネックを計測するために予選のときから準備したのは、

  • ウェブサーバーのアクセスログに応答時間を追加し、LTSVで出力する
  • LTSVを処理し、一回のベンチマークでアクセスされたURLごとの処理時間の合計を出す

ということです。URLごとの合計時間は、PHPの初期実装では次のようでした。

POST /initialize HTTP/1.1 0.082
GET /me/final_report HTTP/1.1 0.32
POST /slots/*/ads 29.944
GET /me/report HTTP/1.1 40.462
GET /slots/*/ads/* 50.821
GET /slots/*/ad 52.249
GET /slots/*/ads/*/redirect 53.722
POST /slots/*/ads/*/count 59.053
GET /slots/*/ads/*/asset 380.54

右端の数字は、合計の処理時間のマイクロ秒です。これを見ると最後の GET /slots/*ads/*/asset にもっとも時間がかかっていることが分かります。

レギュレーションを読むと、どこに何点の配点があるかということが分かるので、それをもとにもっともスコアに効いてくるボトルネックを順につぶしていくということをひたすら繰り返すことになります。

本戦ではサーバーが3台ありました。動画をとにかく数多く配信することがスコアアップにつながるようでしたので、キャッシュサーバーを前に2台を置いて1台をアプリサーバーとするというようなチューニングをしていたところ、5位以内くらいに浮上するようになりました。

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コンテストのあいだは、こういうランキングが随時更新されるのです。「ナイスカロリー」が僕らです。

いろいろやっていたのですが、どんなチームもまだ1万点を超えないという状況の中、「チームフリー素材」というチームがいきなり30万点を出して衝撃が走りました。その後その点数は消えてしまったので、ベンチマークのバグかな―とおもってやりすごしてしまったのですが、本当はバグじゃなかったようです。後で分かるのですが、実はそこがポイントでした。

コンテストの終了間際になり、ぼくらのチームはベンチマークのスコアが安定しない、というよりベンチマークの出す原因不明のエラーにより0点になるという状況がずっと続きました。その状況が改善しないまま19時に競技終了。これはもうだめか、最下位か・・と思いながら発表を待っていると、なんとちゃんとスコアがつき、しかも14448点で、4位でした!

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ぼくらのチームです。写真はISUCON公式ブログからお借りしました。

しかし、1位のチームはなんと61万点。ぼくらの40倍です。じつはベンチマークプログラムが賢くて、Cache-Control ヘッダを適切にかえしていれば、次から同じ広告は取得しに来ないので、結果的に広告をたくさん配信できた、ということだったようです。33万点というスコアを見てその可能性に気づいたのはトップのチームだけだったようですから、ぼくたち参加者は出題者に完敗したような気分です。

ともあれ、たくさんの参加者の中に身をおいて、純粋にエンジニアとして競争するというのはいままでにない経験で、得るものが多かったです。優秀なのはチームの他の二人でぼく自身はあんまり何もしてなかったとはいえ。

最後になりますが、LINEの主催チーム、クックパッドの出題チーム、テコラスのインフラ提供チームのみなさんには感謝の言葉しかありません。傍から見ていても本当に大変そうでした。特に出題チームの3人は、前日から徹夜したうえで、当日もベンチマークの不具合対応などで終始忙しそうでした。次回も開催されるようですが、ぜひ主催側に無理のない形やスケジュールで開催していただければと思っています。ありがとうございました。

主役のせいでキャプションがずれる

駅で電車を待ってたら、目の前の看板で冨永愛さんが片桐はいりさんになっていた。

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これは違う。片桐はいりさんはこんなエラじゃなかったはずだ。と思ったら、左隣では本物の片桐はいりさんが寺島しのぶさんということになっていた。

なるほど、これはキャプションがずれてるんだ。

2キャプションのずれはちょうど赤線のようになっていた。一番右の松尾スズキさん辺りでは合ってるのに、左に行くに従ってずれてる。なんでこんなふうになっちゃったんだろう?

よく見ると、一番左に「大森南朋」と名前だけがあって写真がない。これがカギだ。もっというと、これはキャプションじゃなくて、写真とは独立に役者名を並べたテキストが、偶然キャプションに見えていただけなのだ。

じゃあ大森南朋さんの写真はどこにある。

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なるほど。すべては主役の写真だけを別枠にしたせいだったのか。

今日、気づいたこと。

主役のせいでキャプションがずれる。