この記事はヘボコンAdvent Calendar 2017の5日目の記事です。
ヘボコンとは、知人である石川大樹さんが2014年に始めた「技術力の低い人限定ロボコン」のこと。いまでは世界的な広がりを見せ、25カ国以上の国々で開催されている。
ヘボコンでは毎回、優勝トロフィーを小さな子どもが作る。そして第二回ヘボコンのトロフィーを、うちの息子(当時6歳)が作ったのだった。
そんな縁もあり、いつかはヘボコンに参加しようと思っていた。機会がめぐってきたのは、2016年10月に東京デザインウィークで開かれたヘボコン大会だった。
大会の副題は「ペイント・エディション」。ロボットが相撲をしながらなんらかのペイントをする、というものだった。どんなロボットにどんなペイントをさせるか、それが参加者の創意工夫のしどころだ。
ところがぼくは、「ロボットのアイデアはあとで考える」という選択肢をとった。自分の技術ではどうせロクに動くロボットは作れないだろう。だったらまず何とかして動く車体のようなものを先につくり、テーマはそれから考えればいいと思ったのだ。しかしそれが失敗だった。
ヘボコンのロボットを作るには、とりあえずタミヤに行くのがセオリーのようだった。ぼくはとりあえずタミヤに行き、2時間くらい悩んで有線のコントローラーとギアボックスを買ってきた。
それで組み立てたのだが、「どう考えても無理!説明書が間違ってる!!」と投げたくなるのを5回は繰り返した。
それでもなんとかそれらしい形になった。最初は4輪車にしていたのだけど、それだと左右に方向転換できない、ということを試して初めて知り、急遽3輪車にした。そのためにもう一度新橋のタミヤに行ったのだ。ここまで都合2週間くらいかかっている。
そしてなんとか3輪車が動くようになった。そしてはたと困った。実を言うと、動くものが作れないと思っていたのだ。「ヘボくて動きませんでしたー」と言おうと思っていた。
しかし動いてしまった。となると、なにかいいアイデアを考えないといけない。
歴代のヘボコンを見ていると、ヘボとは名ばかり、じつはみんな素敵なテーマを持っていて、ただ技術がそれに伴わずロボットがうまく動かないようなのが多かった。
いまのぼくは逆だ。テーマは何もない。ただ、動く。こんなヘボい状況があるだろうか。
結局、「ペイント」というお題をそのまま体現することにした。パレットを車体にしたのだ。
(写真はデイリーポータルZより)
パレットに、絵の具や筆を置いた。タイヤも紙テープに変えた。走れば走るほど紙テープがほどけるようにしたのだ。
(同じくデイリーポータルZより)
動けば動くほど紙テープはほどけ、最終的にはまったく動かなくなる。その点がヘボくてよかった、という感想をもらったりもした。
しかし、告白しなければならない。この紙テープは、「テーマがない」というヘボさを隠すために、後から追加したヘボさであることを。
見た目はパレットにした。ああ、「ペイント」を体現したんだな、と分かってもらえるだろう。しかし、足がタイヤのままだと、そつなく動いてしまう。なんの面白みもないのだ。だから、打算的に足を紙テープにした。
そんなヘボの作り方があっていいだろうか。いや、よくない。よくないのだが、ほかにアイデアがなかったのだ。
世の中にはいろいろなヘボさがある。作りたいものがあるのにうまくいかない。間に合わない。作ったのに電車に置き忘れる。どれもいい。
ぼくの場合は、テーマが思いつかない、なのであった。これもまたなかなかのヘボさだったと思う。