思考としてのランドスケープ本の出版記念トークイベントに行ってきた

 

石川初さん(慶應義塾大学教授)の新刊「思考としてのランドスケープ 地上学への誘い」(LIXIL出版)の刊行記念イベントに行ってきた。

場所は下北沢の本屋B&Bで、内容は石川さんと大山顕さんによるスライドを使ったトークイベント。お二人のお話はいつも面白いです。

石川さんの話

著者である石川さんの話は、徳島県の神山町でのフィールドワークについて。本では第一章の「FAB-G」にあたる部分。

・神山町には工作能力に長けた年長者がいる
・勝手にFAB-Gと呼んでいる
・Fabrication Skilled Grandfather の略。
・生活に必要なものを何でもつくる
・彼らは材料のもとの意味を忘れて、何に使えるかで見る。
・いい感じの杉の木の桶と、100均のプラスチックの桶が平等に扱われる。
・100均を使った工作者がものを買う態度も一緒
・商品の本来の意味ではなく、何に使えそうかで買う
・100均は一種の雑木林ともいえる

石川さんは、ふだん関係ないものを同じだと言ってはっとさせることがよくある。「100均は雑木林だ」とか言ってみたい。

あとネーミングがキャッチー。「工作の上手なおじいさん」じゃなくて「FAB-G」。慶應の研究室でも、何かを見つけたらそれにうまいネーミングを当てることを推奨してるらしい。

ネーミングは大山さんもいつもうまい。「マンションポエム」とか。

「本物の正義」問題

・神山町の建築はいくつかの傾向に分類できる。
・そのうちの一つが「本物の正義」
・素材が本物、つまり正統的であることが重要

「本物の正義」という言葉は石川さんが別のイベントでぽろっと言っていて意味が分からなかったんだけど、今回ようやくたぶん分かった。

つまり、FAB-Gが本物の杉の桶と100均の桶を等価に見るのとは違って、本物の杉の桶であることを何よりも重要視するっていう考え方のことだろう。

そしてそういう態度を取るのは地元住民ではなく、むしろ観光客や都市から来た事業者だったりする。外の人は田舎にロマンを見るけど、中の人は実利を見るというようなことだろうか。

あと、なにかを大規模にやろうとすると、正義に頼りがちだということもあるのかもしれない。浮かれ電飾を街ぐるみでやるにあたって、「絆」みたいな正義が援用されたという大山さんの話を思い出した。

浮かれ電飾論〜浮かれ電飾は「正義化する」〜
http://portal.nifty.com/kiji/171215201476_1.htm

FAB-Gの活動は個人的なものなので、自分が使えればいい。正義はとくに必要ない。

大山さんの話

 

つづいて大山さんの話。

・先日、子供が生まれた。
・生まれた病院から自宅まで一緒に帰ったGPSログがある
・それ以降も外出の際はすべて同行しているのでログがある
・つまり、生まれた瞬間からのログがある!
・以上、自慢

冒頭の余談がすごすぎた。GPSログの第2ステージが始まってる。生まれた瞬間からのすべての移動履歴がある人はたぶん世界で初めてだろう。子供がいやがったらやめますとのこと。

・今回は埋立地の話
・ランドスケープの語源はじつは「ランドショップ」かもしれない
・ショップは「スコップ」のこと。つまり埋め立て。
・ファウストが最後に願ったのも埋め立てだった。

・東京湾を埋め立てるネオトーキョー構想があった。
・なんと核で千葉の山を削って、その土を使おうとした。
・実現しなくてよかった。

・京急の産業道路駅が新しい名前を募集している。
・産業道路が地下を通るようになったから。
・地上からは地下はないのと一緒か。
・いっぽうで、地下鉄の駅は地上に名前の由来を求める。

 

日本橋問題

 

・日本橋はインフラの歴史が重なっているからよい
・空が欲しいのなら高速道路を壊すのではなくて、その上に新しい橋をかけるべき
・オランダのエイドリアン・ヒューゼというランドスケープアーキテクトが日本橋に来た時、まったく同じことを言った上、日本橋川の水の下に、かつての木の橋たちも沈めて歴史の厚みを持たせるのがいいと言った(石川さん)
・それは思いいたらなかった。そのとおりだ。(大山さん)

・首都高は上から下をながめられない
・日本橋の上にパーキングエリアを作ればいい

日本橋問題については、大山さんが急遽ニュース番組によばれて五十嵐太郎さんたちと話をしたときと同趣旨だった。大山さんは、そろそろどこかの先生になったらいいのになと思った。

その後はサイン会があり、時間が押していることもあって質疑応答はなく終了。石川さんに、公園と銀座ソニーパークのことを聞きたかった。どこかで聞きたい。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *